冷え込んだ朝、誰も住んでいない家のなかで、水道管が割れることがあります。
割れた瞬間の音に気づく人はいません。水はそのまま流れつづけ、次に誰かが扉を開けたとき、床が水浸しになっている。離れて暮らすご実家でそうなった、というご相談をいただいたことがあります。
冬の空き家でいちばん怖いのは、凍ること自体よりも、止める人がいないことかもしれません。住んでいれば、水の出ない朝に気づきます。誰もいない家では、気づかれないまま被害だけが広がっていきます。
割れるのは凍った朝、あふれるのは暖かい昼
水は凍ると、体積がおよそ9パーセント増えます。管のなかでその力が逃げ場を失うと、金属や樹脂の管に細い亀裂が入ります。
やっかいなのは、そのときにはまだ水が出てこないことです。氷が栓の代わりをしているからです。気温が上がって氷が溶けたところで、割れ目から一気に水が噴き出す。破裂に気づくのが、凍った朝ではなく暖かくなった昼になりがちなのは、このためです。
人が住んでいる家なら、それでも誰かが気づきます。空き家では、噴き出した水が何時間も、ときには何日も、流れつづけることになります。床が水浸しになるというのは、そういう時間の積み重ねです。
京都でも、凍るときは凍ります
水道管は、気温がおおむねマイナス4度を下回ると凍りやすくなるといわれています。各地の水道局が注意を呼びかけている目安も、この数字です。
京都の1月の日最低気温は、平年値で1.2度。数字だけ見れば、氷点下が続く土地ではありません。けれどこれはひと月をならした平均で、よく晴れて冷え込んだ朝には、氷点下まで下がる日があります。
そして気温は、家じゅうに等しく当たるわけではありません。日の差さない北側、風の通り道、外にむき出しの配管。そうした場所は、天気予報の数字より冷えます。「京都だから大丈夫」とは、言い切れないのです。
凍りやすいのは、外に出ているところ
凍結は、外の空気に直接触れている場所から始まります。冬に入る前に見ておきたいのは、次のようなところです。
- 屋外の蛇口、散水栓
- むき出しのまま外を走っている配管
- 建物の北側や、風当たりの強い場所にある配管
- 水道メーターボックスのまわり
- 給湯器と、そのまわりの配管
どれも、家のなかを一周しただけでは目に入りません。寒くなる前に一度、外まわりをゆっくり歩いてみてください。
家のなかにも、外気に近い場所はあります。北向きの洗面所や浴室、外壁に面した壁のなかを通る配管、床下。暖房の入らない空き家では、室内といっても外とさほど変わらない温度になります。「屋内だから凍らない」とは考えないほうが安全です。
冬を越す前に、しておきたいこと
ひとつは、保温です。外に出ている配管や蛇口に保温材やタオルを巻き、その上からビニールなどで覆って、濡れないようにします。濡れたままの布はかえって凍りやすくなるので、上を覆うところまでが一組です。
保温材はホームセンターで手に入ります。巻くときは、すきまをつくらないこと。配管の途中だけを覆って蛇口の根元が出ていると、その一点から凍っていきます。弱いところに合わせて、家は冷えます。
もうひとつが、水抜きです。管のなかに水がなければ、凍っても割れません。長く留守にする家では、こちらが本筋になります。
手順は、思っているより単純です。
- 屋外のメーターボックスのなかにある元栓(止水栓)を閉める
- 家のなかの蛇口を順に開け、管に残った水を出しきる
- 水が出なくなったら、蛇口を閉める
元栓はゆっくり回します。急に操作すると、管を傷めることがあります。
水を止めたら、玄関に一枚、紙を貼っておくと親切です。「元栓を閉めています」。ご家族が立ち寄ったとき、あるいは工事や点検の方が入ったとき、水が出ないことに戸惑わずにすみます。小さなことですが、遠方にお住まいだと、この一枚が電話一本の手間を省いてくれます。
給湯器や浴槽の追い焚き配管は、機種によって水の抜き方が違います。取扱説明書を確かめるか、分からなければ設置した業者に聞くのが確実です。電源を切ると凍結防止の機能まで止まる機種もあるので、「とりあえずコンセントを抜いておく」のはおすすめできません。
住んでいる家の対策としては、冷え込む夜に蛇口から糸のように水を流しつづけ、管のなかの水を動かしておく方法もあります。ただ、これは誰かが家にいて、蛇口を止められることが前提です。空き家で何日も流しっぱなしにするのは、水道料金の面でも、排水のつまりを見つけられない点でも、あまり向いていません。留守の家では、水を抜いてしまうほうが素直です。
「通水」と「水抜き」を、どう考えるか
空き家の見回りでは、蛇口とトイレの水を流す通水が欠かせません。排水口の下で、においや虫の侵入をふせいでいる封水が、乾いて切れてしまうからです(空き家の管理は、なぜ大切なのか)。
冬は、この通水と水抜きが少しぶつかります。考え方は、こうです。
冬のあいだも定期的に通えるなら、通水をつづけて、外まわりの保温でしのぐ。次に来られるのが春先になるなら、水を抜いて冬を越させ、春の訪問を通水から始める。どちらが正しいというより、次にいつ行けるかで決まります。
水を抜いて越冬させた家では、春にいくらか手間が戻ってきます。封水が切れているので、しばらく下水のにおいが上がってくる。長く止まっていた管から、最初のうちは濁った水が出ることもあります。どれも通水を続けていけば落ち着くものですが、そのつもりで行くのと、行ってから驚くのとでは、気持ちの負担がずいぶん違います。
それでも凍ってしまったら
水が出ないだけなら、あわてずにすみます。凍った部分にタオルを巻き、40度から50度くらいのぬるま湯を、ゆっくりかけて溶かします。熱湯は使いません。急な温度差で、管が割れることがあります。
水があふれている、濡れた跡がある。そのときは、まず元栓を閉めきって水を止めます。そのうえで、水道局の指定給水装置工事事業者へ連絡してください。
なお、水道メーターから家側の給水設備は、使っている方が管理するものとされています。そこで起きた漏水の修理費や、流れてしまった分の水道料金は、原則として所有者の負担です。壁のなかや地中など、見つけにくい場所からの漏水について減額の制度を設けている水道局もありますが、条件も申請の仕方も自治体ごとに違います。心当たりがあれば、その地域の水道局に確かめてみてください。
見にいけない冬は、代わりに
一輪の「空き家やさん」では、京都・長岡京を中心に、見回りと清掃で空き家を傷ませない状態にたもつお手伝いをしています。
換気や通水、水まわりと外まわりの様子まで見て、写真付きでご報告します。夏とは見るところが変わるだけで、やっていることは同じです(夏のあいだに、空き家を一度見にいきませんか)。
家は、人の手が届いているあいだは弱りません。この冬をどうまもるか、一緒に考えさせてください。